仏塔の高さが、76メーターだと見知りました。
その名は、黄金の丘、プー・カオ・トーンと言います。
もっとも、お寺自体はワット・サケットと言いますので、その名前が通用しています。
実は、この塔こそ四十年前までバンコク一高い建築物でした。
でも、その後は、経済成長に伴って雨後の筍みたいに高層ビルが建設されています。
現在、一番高いのは、バイヨークタワーIIでして三百四メーターです。
これ以外にも、90メーター以上のビルは、445本も林立していました。
これは、昨年の「世界都市高層ビルランキング」で調査されたものです。
第五位に堂々ランクインですから、バンコクも世界に名だたる摩天楼都市だと言えるのではないでしょうか。
となれば、この丘もかつてほどの威勢は失せてしまったようにも感じます。
ですが、ありがたく登らせていただければ、あなたはきっと悟ります。
この眺望のすばらしさだけは、以前と変わらぬままだと実感するはずです。
先ず、周辺に奇跡的なほど高層建築物が見当たりません。
唯一、東側にセンセーブ運河に沿ったボーベタワーが邪魔なだけでしょう。
反対に西から南の方角にかけては、エメラルド寺院など王室に関る建造物が集まっています。
たぶん、この周辺ではこれより高い造作は、タブーのような感じがしました。
もし、一般の建物が王様のお住まいになる王宮を見下ろすようになれば、それは王室に対する不敬と言うものでしょう。でも、この塔は仏教の教えによる建築でして、はばかられることがありません。
おそらく、地元の人もしっかり配慮しているのだと思いました。
でなければ、自分の権勢を誇りたければ、近辺の土地を買収し、これ見よがせに摩天楼をおっ立てて見下ろせば良いだけのことです。
でも、そんなことをする人は、今の今までいなかった分けです。
と言うわけで、日本は建前社会だとよく言われますが、タイの人々も似たような行動様式を重んじているのかも知れません。国家が調和の取れた発展をなすためには、なにを敬い尊ばねばならないのか、国民は既に暗黙に了解した上で生活しているのです。そんなことを改めて分からせてくれた、この黄金の丘には、改めて畏敬の念を覚えた道産子社長なのでした。
(この巻き、終わり)
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