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その島は、海に浮かんでいません。
首都バンコクを流れるチャオプラヤー川の中州みたいな島です。
しかも、かつては地続きになっていました。
クレットの意味は、「小川をつなぐ運河」と言う意味だそうです。
島は、およそ三百年前まで地続きでした。
当時は、川がコの字みたいにここで大きく蛇行していたのです。
それで、船の時間の節約もあって、川に近道の運河を造りました。
だから、出っ張っていた土地は切り離されてしまった。
年々、運河は整備されて、川幅も拡がります。
こうして、向こう岸は、次第に遠ざかっていきました。
つまり、この土地は人の手によって島へ生まれ変わったのです。
それが、今あるクレット島なんですね。
しかも、住民の多くがモン族を祖先にしています。
ちょっと、タイの人とは違ってエキゾチックなのかもしれません。
それで、地元のバンコクっ子にとっても、お気軽な行楽地になっています。
それで、この島モドキは、所在がバンコクにないのですよ。
隣はノンタブリー県のパーククレット郡にある島なのです。
だから、バンコクの中心部からたどり着くには、結構時間がかかります。
ですが、この28日の仏誕節の祝日を利用して、出陣して参りました。
前々から、訪ねてみたかったのも事実です。
こちらの日本人向けミニコミ誌で、結構紹介されていました。
川の中にある島という観光地が、珍しいんでしょう。
でも、行き当たりばったりで行くには、バスぐらいしかなさそうです。
日本人向けに出された「バンコクバス路線図」を引っ張り出してきました。
にらめっこしながら、路線を選んでみます。
結局、BTSのラチャテウイー駅から、ペチャブリ通りのバス停に出て、そこからエアコンバス505番に乗ることにしました。
ところがです。
当日、そのバス停で三十分以上待っても、バスが来ないんですね。
日陰はないし、朝から晴れ渡っていて、日差しが強くて汗ダクダクです。
良くあるんですよ。
バス路線を通知もせずに中止したり、経路をかってに変更するのは日常茶飯事です。
ここは、タイ人の乗りで気にせずマイペンライで行きましょう。
何回か小分けで乗り換えていけばよいだけです。
幸いなことに、バス路線図は持って来ました。
あーでもない、こーでもないとその場で作戦会議です。
結局、16番のバスに乗って、チャオプラヤー川に並行するサムセン通りまで出ました。
後は、ここから32番に乗り換えて、終点のパーククレットを目指しました。
最近は、エアコンバスが増えたので、乗れば楽チンで天国ですよ。
ただ、行き先を告げて料金を払うのが難儀ですね。
持っていた地図で地名を見せたりして、無理やり理解させてしまいます。
中には乗客で英語の出来る人もいて、”ここはどこだ”とか教えてくれます。
路線バスとしては、結構な下町を走っていましたから、乗ってくる日本人が物珍しかったのでしょう。
地元の人の親切さにも触れて、面白いバスの旅になりました。
ようやく、クレット島近くの停留所に着きました。
いやはや、バスに乗ってから、二時間以上も掛かっています。
結局、渡し舟で島に渡って、滞在したのはわずか一時間半でした。
あんまり、見るもんがなかったんですよ。
せいぜい、土産物屋さんの長い小路をぷらぷら歩くか、お寺巡りをするくらいです。
そんなに特色のある観光地でもなくて、一度訪ねておけば良いでしょう。
と言うことで、帰りはビクトリーモニュメントと英語で書かれた高速道路経由のバス166番に乗って戻りました。
わずか二十分の乗車時間ですよ。
往路に掛かった二時間以上は、一体何だったのでしょうか。
そんな感慨にも浸りながら、小さな旅を思い返す道産子社長なのでした。
(この巻き、終わり)