札幌スープカレーなるものが、この世にあると聞く。
貧乏社長は、道産子で札幌っ子なんだが、内地へ転進した三十年近く前には、そんなもの影も形も無かった。この料理を初めて知ったのは何年前だろう。自分の好みでない、ある意味では恥知らずの大泉洋とか言うタレントが、番組で紹介していたからだ。どこの東京キー局の番組だったか忘れたが、自分の人となりが曝された上で、おまけで地元の好物を紹介させられていたのである。
つまり、それがスープカレーとか言うものだったのだ。
第一印象は、カレーシチューの親戚みたいなブイヤベースに感じられた。
ただ、良く煮込んであるので、素材の旨味が十分に煮汁の中に引き出される。それに、特別に調合したスパイスには薬膳的な発汗作用も加わる、だから汗を掻き掻き舌つつみを打つことが体に良いのだとか、など適当に薀蓄の披露も加わり、視聴者の興味を掻きたてて健康志向メニューを売り込む趣向だと思った。
テレビの画面からは、さらさらのスープ状のカレーが写し出された。当時、トロミのあるカレーしか知らない貧乏社長には、かくもこんな食い物があるのかと新鮮な印象をもったものだ。
しかしだ。
タイに来てしまえば、何のことは無い。このメニュー、在り来たりにどこにでもあるのである。スープカレーなどとほざく前に、こちらの地元のカレーを食してみれば良い。どっちが元祖なんだか本家なんだか家元なのか、自ずと分かるはずだ。もともと、日本以外のアジア圏のカレーは、トロミとは無縁なのが当たり前だ。
つまり、ご飯の掛け汁なのである。
ただ、違いもある。とにかく煮込み料理だからシンプルなのである。南方の国は、年中暑いから自然に汗を掻く。それで、日本と違って薬膳にすがる意味も無い。辛いスパイスが使われているのも、食欲を増進させる意図だろう。ただ、ココナッツミルクが隠し味に使われているのが大きく違う。これは、日本には無い食材だ。特有な匂いのクセもあって、受け付けない日本人もいるかもしれない。
カレーの具もあまり豊富とは言えない。しかし、タイならではの竹の子のスライスやら、小さな丸ナスやら、大根やら、コショウ豆(pea aubergine)やら、赤とうがらしの切り身に、加えて魚のつみれボールなんかも入っていたりする。逆に、じゃがいもや玉ねぎは全くと言って良いほど、見かけない。
貧乏社長工場の食堂でも、週に一回は昼食のメニューでカレーが出される。スープの色が分けてグリーンカレー、イエローカレー、レッドカレーのように呼び分けるんだが、基本の味はカレーなので味が大差が無い。
ただ、この間のカボチャカレーは、すごく煮込んだようで具がスープに溶け出して、トロミがかなりついて日本のカレーに似通っていた。しかし、あきらめやすいタイ人の性格に煮ているのか、粘着気質の感触はなく、あくまでもサラッが基本なのである。
このタイカレーは、どうやって作るのかは上さん任せなんで分からんのだが、地元のスーパーに行くとカレールーみたいなペーストが売っているし、ココナッツミルクのパウダーも売っていたりする。これをベースに適当に混ぜ合わせて煮込むとでき上がるんじゃやないだろうか。ペーストもパウダーも安い。ビラスーパーで見たら11.5バーツ(35円)から、ココナツミルクパウダーは14バーツ(42円)から品揃えがあった。
要するに、こちらのカレーは安く早くおいしくがモットーの庶民の料理なのである。
カルフールのフードコートへ言っても、グリーンカレーとレッドカレーの二品にご飯をつけても30バーツ(90円)にしかならない。方や、日本のスープカレーは仰々しくて能書き垂れながら、結構なお金をふんだくられて食べると言うではないか。そこまでして、味わう意味があるのだろうか。
そんなことを思いながら、スープカレーを食べるんだったら、つべこべ言わずにタイへ来いと叫びたくなる貧乏社長なのでありました。
(この巻き、終り)
4 件のコメント:
今はアレルギー(喘息発作が出ます)のため、私はカレーを食べられなくなったけれど、日本にあるタイ料理店でスープカレーを食べました。
もちろんぐりぐりももんがさんのおっしゃるように、「つべこべ言わずにタイへ来い」ではありませんが、スープカレー、おいしかったです。
日本のどろ~~~っとしたカレーって、ほんとにカレーなの?って昔から疑問を持っていました。なので、自分では晩ご飯の残りを、翌日にスープにして食べたりしていました。そのまま飲んだり、ご飯にかけたり。その方がおいしかったからです。
どろどろカレーは日本独特のものかもしれません。インドの方も、日本人のカレーの食べ方はヘンとおっしゃっておられましたから(^^)
今、日本では、「インドカレー」のお店が繁盛していますよ。店もずいぶん増えましたが、淘汰が続いています。
個人的には、カレーの珍しさより、ナンの珍しさを味わいにきている日本人が多いように思えるのですが・・・。
さっきまで書いていたコメントが飛びました。今、何を書いていたか思い出しております。
実は、札幌ご当地メニューのスープカレーもラーメンも、我輩の高校の先輩がお店を切り盛りしております。一つは、木多朗ブランドで、もう一つはラーメン逍遥亭なのです。
そこで、ラーメンの先輩の方が、大学まで一緒なので、肩入れさせていただいております。ラーメンは安近短な日本食の代表でありましょう。推しがいはあろうと言うものです。事実、バンコクにもラーメン店はたくさんあります。
方や、スープカレーはどうでしょうか?
ちょっと厳しいかも知れません。何せ、バンコクにはインド系住民が数万人住んでいて、インド料理店も本格的な店が多いのです。
そんなことで、記事を書いてみました。
タイに慣れ切れていない私はどろどろカレーが無性に食べたくなります。
そして最近はドライカレーまで作って食べています。
イサーン地方ではあまりカレーを食べないようです。
我家では出てきたことがありません。
まぁ、カウニャウにはあいそうもありませんが・・・。
これからも時々どろどろカレーを作って食べ続けると思います。(笑)
もちろん、タイのサラサラカレーもバンコクへ行く時などにぶっかけ飯屋で食べま~す。
ドラえもんさんへ、
イーサンの料理に、確かにカレーは無いですね。チェンマイへ行けば、カオソイと言うカレー麺がありますけども、北部と東北部は、違うんでしょうね。
とろみを付けられる時は、どうされていますか?日本のルーが無ければ、カボチャで煮込むとトロミが出るのは本当で、代用になります。甘みも出るので辛さが抑えられて、タイ風とも違う無国籍な風味に様変わりします。では...
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