2010年1月1日金曜日

糞とエメラルドの巻き

確か、「灰とダイヤモンド」と言う映画を、学生の頃に見た記憶がある。
もう、三十年近く前のことで、札幌で上映の機会に恵まれた。
粗筋は、ほとんど覚えていない。
だが、闇と光が交錯する巧みなモノクロの描写だけは、強く印象に残っている。

それで、今改めてウイキで調べてみた。
作品は、ポーランドのアンジェイ・ワイダが監督している。
この人は、東欧民主化の先駆けになった”連帯”運動を強く支持していたはずだ。

この政治運動は、当時、世界中の人が関心を持っていたと思う。
日本のマスコミでも盛んに話題を取り上げたし、自分も新聞・テレビを通じて動向を注目していた。
しかも、ワイダ監督は、この連帯をモチーフに映画作品”鉄の男”を公開している。

だからこそ、この監督の過去の作品にも光が当てられて、北辺の地にまで上映される機会が巡ってきたのだと思い返した。

こんな思い出も、若い時の純粋な政治に向かう気持ちがあったからこそだ。
今は、年を取って老いさらばえた。
そうなると理性は萎えて、不純な連想しか思い浮かばぬのである。

要するに、記事のタイトルは、この映画作品からとっさに連想されたに過ぎない。
何ゆえ、糞なのか、エメラルドなのか。
それは、あの王宮にあるエメラルド寺院で起こったからなのである。

以前にも書いたように、上さんの両親がタイに遊びにやって来た。
色々と観光案内をしてみたが、市内王宮近辺の名所案内は欠かせない。
それで、エメラルド寺院と隣接するワットポーを案内することになったのである。

こうして不純な話は始まった。

ワット・プラケーオことエメラルド寺院は、王室守護寺院である。
つまり、国王のためにあり、王室の宗教儀式や国歌行事を執り行う最上位の場所とされている。
だから、礼儀正しい服装で拝観しなくてはいけない。

間違っても、半ズボン、ランニングシャツ、サンダル履きなどと言う、不埒な出で立ちは許されない。
そんな心得も知らずに、気ままに能天気でやって来た、暑さゆえに半裸に近いような身なりのお姉ちゃん達は、門番に呼び止められ、臨時に着物を貸し出す隣室へと誘われるのである。

時々、腰巻のようなスカートを羽織って歩いていた毛唐のお姉ちゃんもいた。
罰当たり者め。
寛大なお慈悲で入場できたのだから、ありがたく拝観するが良い。

とにやにやしていると、おやっ、許されざる例の男がいたのである。

ご両親を案内しながら寺院の中を歩いていた時のことだ。
Tシャツを着ているのだから、身支度は良しとする。
だがしかし、あの胸元の字は何なのだ。

”糞”だってぇー、、、

濃緑の生地に、からし色の四角い下地が施されている。その上には、堂々と茶色く、その字が躍っていた。常軌を逸脱した、臭気の漂いそうなシャツを着た外人さんがいたのである。

注:写真は参考までです。(ネットから引用)

うーん。

意味も知らずに、文字のスタイルがかっこいいと思って買ってしまったのだろう。
意味を知ったら、この人は直ちに廃棄するんじゃないだろうか。
それに、タイの人も漢字が読めなくて良かったのではないだろうか。
こんな不浄なシャツなんか着ていたら、拝観させてもらえるはずが無いのである。

と言うわけで、なかなかに可愛い彼女を連れ歩いていた、この外人さんとは、もう一度、涅槃仏のワットポーでも再会したのです。心の中が臭気で満たされそうになった貧乏社長は、みんなを連れてそそくさと寺を出るのでありました。
(この巻き、終り)

おまけ:
奈良時代、糞には霊力があると伝えられていて、授かった子供がすくすくと成長できるように、わざと糞の名前をつけてまじないとしていたようです。例えば、「藤原 小屎 ( おぐそ ) 」とか、時代が異なれば考え方も違うと言うことです。

4 件のコメント:

上田正巳 さんのコメント...

「灰とダイヤモンド」へのコメントありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。今年はバンコクに行ってみたいです。

ぐりぐりももんが さんのコメント...

上田さんへ、
生まれ故郷、北海道は遠くなりました。
でも、ここバンコクには北海道人会があるのです。
一番年長の方は、70代後半になりました。人生の殆どをタイで過ごしてきた方がいるのです。
驚きですが、それだけ世界は小さくなったと言う事かもしれません。
こちらこそ、宜しくお願いします。

楽仙堂 さんのコメント...

 ぐりぐりももんがさん
 これは凄いインパクトのある字ですね。
「無知は恐ろしい」という言葉と同時に「知らぬが仏」という言葉も浮かびましたよ。

ぐりぐりももんが さんのコメント...

楽仙堂さんへ、
「知らぬが仏」と言う言葉を思い出せず、そちらのご指摘で、はっとしてしまいました。
むー、ボケたな。
記事で使うべき格言であったのに残念なことでした。
どこかの記事で使わせていただきたいと思います。