2009年5月9日土曜日

リラ冷えは季語で北海道弁でねぇーの巻き

バンコクに持って帰って来た、手元のカルタ一組、その名を「北海道方言かるた」と言う。
貧乏社長は、この4月に故郷の北海道に戻るために一時帰国したんだが、そこで見つけ出したのがこの一品。”北海道開拓の村”を上さんと一緒に訪ねたときに、土産物屋の店先で見つけ出した。お代は、2千円をちょっと切るくらいで、読み手CDが付録で付いてくるから手ごろな感じがした。
北海道弁で喋る人物といえば、タレントで花畑牧場主の田中義剛がお茶の間では有名なんだが、彼はみちのく八戸藩の内地出身なので生粋の道産子ではない。大学から移り住んだ余所者だから、変に強調するイントネーションが異様で、貧乏社長は聞くと虫酸が走るのだが、それはさて置こう。

バンコクの埴生の宿に戻ってからカルタの箱を開けて、読み札と取り札を出しながら、一枚一枚の方言を自分で読み上げてみる。

”あ”から、懐かしさがこみ上げて来た。

読み札:いやぁ、汽車混んでるわ。あずましくないねぇ。
(標準語:いやぁ、電車混んでるな。落ち着かないねぇ。)
取り札:”あ”ずましくない。

”じょっぴんかる(鍵をかける)”、”つっぺ(栓)”、”へなまずるい(すごくずるい)”...
親父もこんな言葉を使っていたなーと、思いだして笑みがこぼれる。もちろん、貧乏社長もガキの時分には使っていた。

北海道弁は、意外と歴史が浅い。

この合成的な方言が形作られ出したのは、僅か百五十年前の明治時代の初期に遡るに過ぎない。当時は、開拓のため内地(本州)のさまざまな地域からたくさんの人々が移住して来た。お互いが交流するうちに、色々な方言が混ざり合って使われて行く中で、北海道言葉が形作られていったことになる。
現在の北海道に散らばる地名を見ても、如何に本州各地から移民を受け入れてきたのかを思い返すことは簡単で、北広島市(広島県から)、北海道伊達市(宮城県から)、釧路市鳥取町(鳥取県から)、新十津川町(奈良県十津川村から)などの地名を挙げる事ができる。

さて、か行、た行・・・と進んで行くうちに、ら行で違和感を感じた。

”リラ冷え”って、本当に方言なの?
確か、道産子の作家:渡辺淳一が『リラ冷えの街』って小説を71年に書いてから有名になった言葉ではないのか?
だとしたら、僅か創生40年に満たない単語を方言として採択するには、土台無理があると言うものだろう。あの頃の北海道なら、おいらを含めて人々はかなり標準語に近い言葉を話していたし、リラ(仏語読み)+冷えの合成形も標準語由来だ。そこで考えたんだが、誰がこの言葉を作ったんだろうと思いついて、リラ冷えをグーグルで検索してみる。

一番にヒットして来たのは、”北海道雑学百貨プッチガイド”と言うサイトで、訪ねてみると”リラ冷えは北海道発祥!?”と言うタイトルが表示されてきた。なになに、「リラ冷え」を創ったのは、榛谷(はんがい)美枝子さんという北海道の俳人で、既に1960年に詠まれた句の冒頭に使われているんだそうな。つまり、俳句の季語に当たる分けで、榛谷自身さんは、リラの花が咲いた頃にも肌寒い日があって、それから「リラ冷え」を編み出したのだと言う。

やっぱりだ。
カルタを作成した編者は、ら行で適当な言葉を見出せずに苦し紛れに選んでしまったのかもしれない。なぜなら、”る”は”ルイベ”となっていて、アイヌ語から出た食べ物言葉を選んでいる。

仕事もゆるくなかったんでないかい。
まあ、みったくないことはすんでないよ。

なかったら、なかったで、はっちゃきこくことないよ。
それが、道産子だよ。


そんな風に、貧乏社長はバンコクで北海道弁をつぶやいたのですが、まさか、このカルタが”Made in Thailand”だったとは、露知らずだったのでした。
(この巻き、終わり)

追記:
貧乏者社長は、基本的にこのカルタが好きです。誤解の無いように願います。
あと、参考までに北海道方言に関わるホームページを挙げておきます。

おしゃべりかるた(シリーズものの”ルー大柴編”は悪乗りじゃない?)

北海道方言(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

妖しい北海道弁講座

ほじくりデータベース 北海道弁ch

みなも使おう!北海道弁!

伏田良のお笑い北海道方言辞典

リラ冷えや黒衣に飾る黒真珠(08/05/16)

2 件のコメント:

popura さんのコメント...

北海道弁カルタ。五十音をすべて北海道弁でつくのは、ゆるくなかったんだべね!

『リラ冷え』といい、「ルイベ』といい、苦しまぎれに、むりっくり当てはめて頑張ったみたい。

ちなみに『め』は『めっぱはいずい』かな (^_^)

ぐりぐりももんが さんのコメント...

popuraさんへ、
バンコクには北海道人会があります。
会合を開いた際に、このカルタで結構盛り上がりました。”め”では、”めっぱ”と”めんこい”は甲乙付け難いですね。それから、”わや”の代わりに”がやがや”しているとか、おいらは使いました。多分、魚のガヤ(エゾメバル)が防波堤で群れている雰囲気がピッタリだったのだと思います。
因みに、このカルタの系列会社にバンコクの人材派遣会社があり、女性社長はトラーリさんと言うのですが、この五月にJunco&Cheepと言う北海道出身バンドをタイへ招聘してコンサートを開く事になっています。
http://tora-ri.seesaa.net/category/1163656-1.html
おいらの後輩では、浜田隆史がラグタイムギタリストとして、小樽を本拠にがんばっていますので、宜しかったら応援してあげてください。
http://www.geocities.jp/otarunay/