2008年9月7日日曜日

ノーベル化学賞の野依先生に感謝、感謝の巻き

とうとう、貧乏社長が風邪でダウンしてしまった。

五十にして天命を知るべきところなんだろうが、おのが体力の限界を省みずに気張るだけ気張って、この五ヶ月仕事で駆けずり回った結果が、この体たらくとなってしまった。
日本に住んでいれば夏風邪はこじらせたら直り難いのは分かっていたんだが、年がら年中夏だらけのバンコクでは季節感も消失してしまって、暑さには馴れたように単純に思い込んで体調管理に注意しなかったのが運の付きだった。仕事で汗びっしょりになってオフィスに帰っても、替えが無くて濡れたままの下着でエアコンは掛けたまんまで仕事を続けて、体温をいたずらに冷やしすぎたのが風邪の原因のようだ。それと、日ごろの疲れも溜まって来て、あまり水を飲めなくなって脱水症状気味になったのかもしれない。
朝、微熱が出て無理に会社は出たが、昼ごろから膝元に悪寒が走って来て我慢できなくなったんで、仕事を切り上げて帰宅して、一時一眠りしてみると急激に38度まで発熱してしまった。
こう言うときには、地元の人が飲む解熱薬の相場は決まっている。サラとかタイレノールは10錠10バーツくらいと値段も安くて、コンビに行くと売っているんで、定番な分け。しかも、結構薬の効きが強いから早く直すにはもってこいだ。おいらの上さんもフジスーパーで買ってきてくれてそれで飲みだしたんだが、数時間おきに服用して市に経っても37度5分までしか下がらない。

結局、二日目も会社を休む破目になってしまった。
体はだるいまんま食欲も無くなって来るばかりで、ひょっとして二三日前に咬まれた蚊が原因でデング熱でも発症したのかもしれないと良からぬ想像が駆け巡る。

これは医者へ行かん限り直せないと決断した。

親会社が駐在員のために旅行傷害保険を掛けてくれているんで、フリーコールで通院の予約を夜中の二時に掛けてみる。二十四時間受付はありがたいもんで対応してくれるんだが、行く予定の病院を知らせねばならないので、スクンビット界隈ならご存知の刺身血別途病院を告げる。
病院の受付で保険会社の連絡が遅れていてひと悶着はあったんだが、何とか診察を受けることが出来た。先生が言うには、点滴でも打って一日病院にいましょうと言うのだが、風邪ぐらいで入院したことは一度も無いので本気なのかと思ってしまう。
分けの分からないうちに救急治療室へ連れて行かれて、血液は採取されるわ、一リットルの馬鹿でかい点滴パックを始められてしまうわで、あれよあれよと言う間に個室の病室まで連行されてしまった。点滴は普通、一時間で150~200ミリリットルの投下だから1リットルなら、6時間くらいは掛かってしまう。時計を見ると10時を過ぎていたんで、一日滞在になるなと諦めてしまった。
後は、テレビを見たり、上さんの買ってきてくれたパンを食べてすきっ腹を満たしたりと、時間を潰しながら日長夕方まで居ついてしまった。夕方には、点滴の注射針も外され、担当医の先生が部屋まで訪問してくれて、血液検査の結果デング熱の恐れは無いので、治療薬を出しておくから三日後に診察を受けに来てくれと言う。

結局、再診は面倒くさくて行かなかったんだが、貰った薬のひとつに、貧乏社長は興味をもってしまった。

抗生剤”CraVIT”とかいてある。クラビット、抗生物質だって?
風邪程度でそんな大それた薬が要り様なんだろうか?

もっとも、先生は白血球が4600位と成人男性にしては多少低めの数値が検査で出たんで、風邪のウイルスの影響で減少を考えて抗生剤を投与したんだろうと、今になって思う。
この薬、ネットで色々と調べたんだが、合成抗菌剤で細菌による感染症の治療薬 と説明されている。インフルエンザ菌、緑膿菌、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスや炭疽菌、ペスト、リケッチアなど、広く感染症に用いられ、出色は、テロに用いられる可能性がある細菌にまで殺菌効果を有する、現時点では最強な治療薬とのことだ。何で、こんな薬、処方されたんだが良く分からんのだが、それだけタイには日本と違って色々な細菌がうじゃうじゃいるんで、念のために疑いのある症状に関わる細菌なら手当たり次第に押さえ込んでおこうとしたのかもしれない。

まあ、この薬のおかげもあったと思うんだが、ようやく健康も回復したんで、ハッピーエンドにしたい。

それでもって、この薬の開発には日本の科学技術が大いに貢献していて、しかもノーベル化学賞を受章した野依先生が導き出した不斉合成反応が鍵となっていることを、ネットで調べている最中に出会った。
何でも、この薬が開発される前にタリビッドと言う、同じ薬効を持つ薬が存在していたが、二つの主成分があって、化合物の立体構造を示す記号だとこの二つの化合物があたかも鏡のように見た目は同じなのに、薬の効果が無かったり逆に副作用があったりして、その特徴が異なるんだそうだ。それで、薬の成分として有効な片方のみを製造して効果を倍増させることを目的に「不斉合成反応」と言う方法が利用された結果、このクラビットが出来たんだそうだが、おいらには難しくて分からない。

とにかく、不斉合成反応は非常に難しく、合成ルート、触媒などの条件を決めるのは一種の職人芸らしいのだが、とにかく、野依先生の業績はやっぱりノーベル賞貰えて当たり前と思った、貧乏社長なのでした。(この巻き、終わり)

追伸:因みに、この薬、市販されていてフジスーパーの薬局で5錠:550バーツで販売されていました。かなり高価な薬のようです。

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