2008年9月14日日曜日

タイで貧乏社長はBCLにヘンシ~ンの巻き

BCLって聞きなれらない略語でなんだろうと思う人が多いかもしれない。ネットでググルと、ちゃんとフリー百科事典のウイキペディアで解説ページが筆頭に出てくる。

”BCL (びーしーえる)とは、Broadcasting Listening / Listener の頭字語である。放送(特に短波による国際放送)を聴取して楽しむ趣味を指す。日本では1970年代に中高生を中心に一大ブームが起った。”

まっ、要するに国内外のラジオ番組を受信して聞こえた結果を放送局まで、ハガキ何かで報告すると「ベリカード」と言う、受信証明書を送ってもらえて、それがきれいなデザインだったりするとコレクションになってしまうと言うホビーなんだな。最近では、ベリカードを送る手間・ヒマ・カネが掛かるもんだからサービスを廃止してしまうような、日本国内の中波放送局もあるようだが、RFCラジオ福島さんのようにホームページで受信報告の書き方を親切に紹介している放送局も未だに健在だ。(写真は、現在のベリカードだそうです。)
それでもって、ベリカードの本命はやっぱり海外の放送局からのイギリスBBCとかラジオオーストラリアなど代表的なカードだったわけで、ラジオの放送開始を告げる、”ビッグベンの鐘の音”とか”ワライカワセミの鳴き声”は、往年のオールドBCLマニアにとって未だに懐かしいジングルと言えるんだ。おいらがガキの頃は、そこまでシャカリキに受信していたわけでもなかったんだが、北海道に住んでいると地方局と系列のなかった在京:文化放送(JOQR)の深夜放送”セイヤング”を聴いていたんで、受信結果を送ってベリカードを貰った記憶がある。(カードはネットから拾ったもの。)
他にも、日本の中波民放局に負けないぐらい強い電波の北京放送とか、放送の後にはなんだか怪しい数字の羅列読みしかしないスパイ暗号もどきの北朝鮮中央放送とか、やっぱり近場の東アジア番組に親しんだね。(タモリの北京放送モノマネのネタは今聞いても秀逸。)

さて、そろそろ貧乏社長の本題に戻るとしよう。

大分、寄り道をしてしまったのだが、おいらもバンコクでBCLの趣味を復活させてみることにした。最初のきっかけは、バンコクでも24時間で日本語FM放送局がこの四月から開局して番組を楽しめることになったらしいと、人づてに聞いたからだ。それと、日本に住んでいた時に、週末のNHKラジオ番組で”地球ラジオ”と言うのを時折聞いていたんだが、短波放送で現地でも受信できると紹介してたのを、シンクロしたように昔の記憶がふっと蘇って来たせいもある。海外在住の日本人から異国の文物を紹介してもらう番組なんだが、本人が当事者になってしまった分けで、是非、こちらでも聞いてみたくなった。

しかし、ラジオはこちらへ持参して来ていない。

バンコクのアパートでは、家具・電化製品が一式で揃えてあるのが当たり前でも、さすがにラジオ、しかも短波までと言うのは有り得ない。どっかに出かけて買うしかないんで、カルフールとかテスコへ繰り出してみたものの、クロックラジオみたいなものはあっても、ラジオ単体の製品がない。どこか別の電気店街を探してだして買うしかないと判断した。
こんな時、ネットでググれば何とか助けになる情報が入ってくる。あたりの付くキーワードを片っ端から入れて検索してみると、トムヤムさんが自身のブログ「タイランドからの便り」で電気製品街でラジオを購入する話を紹介していた。現地の人は、プラカノーングやフワイクワーングのような市場で電化製品を買うことが多いと言う。おいら、スクンビット周辺ならバス一本で行けるプラカーノン市場が便利だと判断して、面倒くさがる上さんを無理やり週末に引っ張り出して、48番バスに乗り込み一緒に買い物に出かけてみた。BTSプラカノン駅を通り越してソイ71通りを過ぎると、市場前バス停があってここで降りる。この市場は、昔、何度か足を運んだことがあるので記憶を頼りに、電気製品を扱うお店の場所を目指して、ひひしめき合う店の細い裏路地を通り過ぎながら、何軒か寄り集まった場所に出くわす。

これはと思ったラジオを物色し、店番にひやかしてみた。

 ”ラジオ、AM・FM、アンニー、タオライ”

 ”ヌンロイ・ハーシップ・バーツ”

150バーツとは安い。でも、短波が聞けないなーと思ったら、隣に素敵な木目の筐体に入ったマルチバンドラジオが鎮座していた。同じように聞いて見いたら、450バーツと答えてくる。トムヤムさんのブログだとAC電源付きを350バーツで買ったとかあるんで、ちょいと高いかもしれない。これを目安にして他を回って見る。斜め向かいの店番のおねーちゃんが所在無さげにしていたんで、聞いてみる。AM/FMが250バーツ、11マルチバンドが320バーツ、しかもAC電源付きだって!?...余りに安すぎる、動くかどうか心配だなーと思っていたら、気持ちが通じたのかどうか知らないが、”テスト・ダ~イ”と、動作テスト出来るよと薦めて電池をセットしてスイッチを入れてくれた。

おぉーっ、中波もFMもしっかり聞こえるではないか、短波バンドは昼間だからザーザー呻くだけだが、夜になれば感度も上がって聞こえてくれるだろう。暑くて他の店を回る気もあんまり無くなったんで、買うことに即決してしまった。値切る気も起ず、320バーツならぼられている気もしない。仕舞いには店番のおねーちゃんが、300バーツで良いからと言ってオマケしてくれた。このラジオ、千円しないわけだ、それでいて11バンドも受信できて、ACコンセントから電源が取れる。多少の混信とか電波の分離が悪いとかは値段に応じて勘弁してあげよう。さすが、世界の工場、中国製のことだけはあるなと感心してしまった。

さて、後生大事に抱えてエアコンバスに乗ってアパートまで帰ってきました。梱包の箱を開けてエアパッキンから取り出して、ACケーブルから電源を取ってスイッチを付ける。

先ずは、FMのJ-Channelから電波探索だ。無料ミニコミ誌DACOで紹介していた93.75メガヘルツへ向けて、多少動きにガタ付くダイアルを回し始めた。日本語が途切れ途切れに聞こえてくるようになる、これだーと思ったら、混信するタイ語の放送局にかき消されてしまった。クリアーな音源のFMなのに、電波の状態が悪くて聞くに堪えない。コンクリート造作のアパートだと電波の入りが弱いせかとも思いつつ、その後、時間帯を変えて朝な夕なに聞いてみても雑音だらけで聞くのをあきらめてしまった。電波はご近所のスクンビット・ナナから出ているらしいのだが、同じ周波数を使う地元局の強い電波が邪魔して実用には程遠い、と言う残念な結果になった。将来、局の機材が増強されて、きっとクリアーな音で聞こえるようになるまで期待して待つことにした。

その日、FM局の受信も一区切りついたところて、続けて短波のNHK海外放送受信に挑戦してみる。ただ、放送する周波数や時間帯が分からないので、ここは便利なインターネットのNHK国際放送サイトから番組・周波数表をダウンロードしてチェックした。何々、東南アジアはシンガポール中継局から、ほぼ全日、時間帯別に周波数を変えて放送しているらしい。時間は、こちらで4時頃だから日本は6時となり、11.74メガヘルツで放送されているようだ。目標は決まったんで、ラジオの周波数バンドを切り替えてダイアルを少しずつ動かしてみる。

おぉーっ、地球ラジオの後藤アナと大輪アナの声が聞こえてくるではないか? 音が大きくなったり、小 さくなったり、短波ラジオそのものだなー。お久しぶりでーすと心の中で挨拶してしまった。ターゲットの周波数にヒットして番組が聞こえてくるのは、いいもんでワクワクする。

そうです。すっかり、貧乏社長は少年の頃のBCLに戻ってしまいました。

ちょっと蛇足だが、もっと驚いたのはネットで同じ番組が聴けるということ、そして、前回の番組放送分まで番組サイトからリスニングできることだった。しかも、毎日の定時ニュースもネットで放送してくれる。

これは便利だ。NHK国際衛星放送はテレビを通じて簡単に視聴できても同時中継なんで二時間の時差がある。朝の7時のニュースを見るには出勤前5時に起きてテレビをつけなければならない。これは、ちょっとつらい。ネットラジオの方が、オンデマンドで朝六時でも日本側7時のニュースを聞くことができて便利なんで、毎朝聞くようになってしまった。

それで、おいらなりの結論なんだが、情報収集源としてそれでもラジオは欠かせないと言い切ってしまいたい。インターネットも衛星放送も、世界を点と線でしかカバーしてるに過ぎない。これらが手に入らないエリア=面は、世界中の大部分が未だに当てはまるだろう。異国で生活する日本人にとって、例えば、世界中に派遣されている青年海外協力隊員の皆さんなんかは、ラジオでNHKの国際放送をきっと聞いているんじゃないだろうか。そして、万が一、日本に災害が発生して何か情報を集めようと思ったとき、ネットが駄目でも、衛星放送が駄目になっても、最後に自由な空間へ電波を飛ばせるラジオがあるではないか。これこそ、究極のメディア・ライフラインなんだと、震災記念日も過ぎた今日この頃、貧乏社長は思ったのでありました。

(この巻き、終わり。)

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