”ティンさん、研修の予算て毎年こんなもんだったっけ?”
”はい、去年は忙しかったので中止しましたが、一昨年はこれぐらいだったと思います。”
”そうですか、研修旅行は、前の前の社長の頃からだったよね?”
”はい、毎年実施するようにしていますが.....”
あんまり、突っ込むと変に思われるんで、前任の社長から引継ぎで聞いていた、うろ覚えな内容に照らし合わせることにして、サインしておくからねと言い渡した。会社の台所が火の車と言うわけでもないので、ここは社長の判断で書類にサインする。
上さんに説明するために、研修の資料と日程表を貰ったんだが、タイ語でほとんど書かれていて研修の内容がよく分からない。ただ、泰日経済技術振興協会(通称ソーソートー)の主催だけに、信頼に足る内容には違いない。
場所は、バンコクから車で2時間北東へ走ったナコーンナヨークのバナナリゾートとか言われて、受講者は先に出発するから、昼飯までに到着してお昼を一緒に取りましょうと言われる。運転手さんの車に乗って、本当に2時間足らずで宿泊先に付いてしまった。研修の講師と一緒に食事をしながら昼食の時間はあっという間に過ぎてしまい、午後は研修に参加してもタイ語ではチンプンカンプンだから遠慮するとして、夕食のパーティーまで時間つぶしに運転手のランさんが観光地を案内してくれることになった。
何でも、タイでも指折りの有名な滝があるらしく、サリカと言うらしい。先ずは行ってもらうことにして、車だと15分も掛からずにふもとの駐車場に到着する。駐車場の回りにはいろいろな土産物屋さんがあって、水遊び用のトランクスが25バーツだったり、ピクニック用のビニールゴザが99バーツで売っていたりして、すっかり観光気分になる。
なるほど、サリカの滝を案内する看板から流れ落ちる流水の白い筋が遠くに見え隠れしているんで、これが例の滝だと思いながら、滝壷へ至る遊歩道の入り口を見るとしっかり入場料金所がある。
看板には、タイ人40バーツ、外国人:200バーツと掲示してあった。えっ、外人は、5倍も高い金を払うのと驚きながら、出張中で一緒に参加してくれたTさんの分も含めて3人分600バーツのために千バーツ札で払う。入場券が3枚でお釣りが二百バーつ?、おいおい、小学生でも計算できるような勘定で釣りを誤魔化そうってのか、ちゃちにくすねようって魂胆だな。釣りの百バーツ二枚を財布にしまわずにしっかり手に握り締めて突き出し、メチャイメチャイ(違うよ、違うよ)と言ってみる。相手も、しぶしぶ、足りない分二百バーツを出してくれる。これがポケットマネーになれば、一日の賃金だから大金だ、相手も騙しで必死だったのかもしれない。この当たりのモラルは、日本なら有り得ないのだが、貧富の差が激しいタイなら生きるための術なのかも知れない。
ふもとまで、結構高低に落差のある遊歩道を十分くらい歩いていくと、トイレ・シャワー設備のある小規模の園地に出てくる。メインの滝は水量が多いと結構高さもあるので雄大に感ずるし、そこから下流へ幾つか小規模な滑め滝が続いていて、水遊びを現地の人が楽しんでいた。
でも、ここだけで帰ってしまうと滝の楽しみは半減してしまう。標識が無いので分かりにくいのだが、滝の左手から頂上まで到達できる山道が取り付いていて、これを登って見ることにした。初めはコンクリの階段が続き、途中からは運動靴無しではちょっと危ないくらいの岩登りを体験するんだが、上さんも登りきったのでごく普通に体力があれば大丈夫だろう。でも、おいらは汗をびっしょりかいてしまったので、タオルと着替えを用意するのが無難だね。
びっくりしたのは、滝の上にもまた滝壷のような小池と小さな落差の滝があった。ここから豊富な水が一番落差の大きいメインの滝へ向かって流れてゆく。結構、滝が何段にも分かれているんで面白い。
この滝は、”泰国の変なスポット”でマレーンポーさんも紹介しているんだが、彼自身の評価はちょっと辛くて次の通りだった。
”評価★☆☆☆☆:行くか行かないかはお任せします…寸評たしかにナコンナヨックでは有数の名所らしいのですが、別に面白いところもないし、滝の規模も日本人にとってはたいしたことないし…無理する必要はないですね。”
多分、滝の上まで登らなかったんだろう。上まで登って見下ろせる滝も、日本でもそう多くは無いから、おいらだったら★三つか四つだろうね。それと、この地区のナコーンナヨク川では、大きなゴム浮き輪を使った川下りなんかを現地の人が楽しんでいるし、日本には珍しい堰堤がものすごい長いタダンダムなんかもあるから、日帰りとか一泊で楽しめる手ごろな観光地じゃないんだろうか!!
おいらが思うに、バンコクの人たちが遊びに行くナコーンナヨークは、横浜市民が日帰り観光する丹沢あたりではないかと思ってしまった。ダムもあるし、川遊びの出来る場所もあるし、日本の滝百選に選ばれた洒水の滝もあるから、似通っている。
最後に、泊まったバンガローがなかなか素敵でした。ちょっと可愛い陶器の置物がところどころで宿泊客を迎えてくれる。貧乏社長としては、手頃な観光地を発見してしまって上さんも大満足だったということなのでした。
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