総務課長が、突然、経理の女性課員を伴って現れました。
手には何か薄いピンクの封筒を持っています。
実を言うと彼女の顔は、もちろん知ってはいます。
ですが、名前がはっきり分からんのです。
何せ、タイの人は、本名の代わりにニックネームで呼び合っています。
実にシンプルなあだ名が多い。
苗字や名前が意外に長ったらしいから、面倒くさいのだと聞きました。
まあ後で良いから、パソコンに仕舞い込んだデータで顔と名前を一致させておきましょう。
でも、何の用件でしょうか。
随分と、はにかんでいるようで、総務課長のアンさんからせかされています。
やっと、あのピンク色の封筒が差し出されました。
中身は分かりません。
それで、やっとこさアンさんから英語で、それが結婚式の招待状だと告げられました。
それは、おめでたいことです。
スタッフが幸せになるのは、社長の私にとってもうれしい。
コングラチュレーション(おめでとう)。
と先ずは、私も英語でお祝いのお返しです。
それで、結婚式は何時なのと聞きました。
えっ、明後日だって、随分と時間が無いもんだ。
日本だったら、普通、一ヶ月前に招待状を渡すのが礼儀でしょう。
でも、こちらではおっとり構えていて、招待は直前なのです。
一週間前だったり、三日前だったりします。
でも、誰も文句を言う人はいない。
用事があれば出席しないだけです。
お祝いは、出席する人に託してしまうのです。
それで、出席していただけますかとお誘いを受けてしまいました。
アンさんが、早速に場所と時間を教えてくれます。
式場はご近所のようですし、時間は仕事帰りに合わせたようです。
ですから、終業のベルが鳴ってからあわてずに会社を出ることにしました。
それでは、喜んで式に出席させていただきますと、答えます。
でも、幾ら包んだら良いのか分かりません。
何時もなら出席しないので、千バーツくらいで済ませてしまいます。
今回は、招待で飲み食いもすることになります。
ちょっとは、奮発しておきたい。
総務課長を読んで聞いてみました。
みんなはどれぐらい包むの。
管理職だと、千バーツくらいだと言われました。
じゃぁ、会食の分もあるから倍の二千バーツですね。
お祝いも決めたし、後は出席するだけだ。
何時のもの通勤姿の背広上下で構わんでしょう。
こちらでは、冠婚葬祭であんまり礼服なんか着やしません。
まあ、女性だけはおめかしして着飾ったりするかもしれない。
それで、結婚式の当日がすぐにやって来ました。
場所も分かっていません。
行き先は、運転手さん任せです。
いつもの帰り道とは逆にアユタヤ方面に向かいました。
二三十分も走ったでしょうか。
なんと、ナワナコン工業団地の表通りに入ってしまったのです。
ここは、取引先の工場もあって、時折出かけるので地理が分かります。
キラキラと電飾も派手に、披露宴の会場がメインの通りに並んでいました。
この日は、タイでは何か縁起の良い日取りかもしれない。
そんな風に感じました。
そんなかんだで、式次第の六時前に会場へ滑り込みました。
入り口では、新郎・新婦が挨拶をするために、待っていてくれます。
後から続々と、出席者が入って来る中で、ずーっと挨拶で立ちっぱなしだったみたいです。
くたびれたんじゃないでしょうか、ちょっと可哀想な気もしました。
とにかく、結婚式の披露宴は何となく始まっていました。
テーブルは、二十卓以上はあったと思います。
でも、三四程のテーブルが埋まったに過ぎませんでした。
ちょっと、早かったかどうかは分かりません。
待ちくたびれて、ウイスキーを飲み始めている人もいます。
ややもすると、前菜のお皿が運ばれてきました。
自分の会社のスタッフも集まってきます。
持参して来たジョニ赤を、やおら取り出しては栓を開けています。
自分も待ちきれずに、ハイボールにしてもらいちびりちびりやってしまいました。
と言うことで、結局、本当の結婚披露宴が始まったのは、飲み食いが始まってから二時間近くが経ってのことでした。その前には、手配した女性歌手が入れ替わり歌うショーがあったり、参加者も飛び込みでカラオケをがなったりして、かなり盛り上がりはあったのです。でも、こっちは飲みすぎて酔っ払いながら、新郎に花輪をかけることになってしまい、次回からは、少し遅れて行くのが礼儀なんじゃないかと思った、道産子社長なのでした。
(この巻き、終り)
おまけ:
彼女の名前は、ラッタナさんでした。改めて、ご結婚おめでとうございます。
4 件のコメント:
タイの一般的な結婚式の様子がよく分かりました。
収容人数を自在に調整できそうなパーティ専用会場で、セレモニー抜きで気さくに行われるのですね。
仏教的な要素も画像からは見えません。
日本でいえば、二次会からスタートするような感じでしょうか。
こういう情報は、小生のような一週間にも満たない通りいっぺんの観光ではつかめません。
かといってバックパッカーの紀行本のような、あまりにも現地に馴染み過ぎた人のレポートも、つきあう対象者が低層過ぎたり、ドラッグや金欠の話ばかりで、気づきポイントがずれてしまっていて分かりにくいところです。
そういう意味で、今回の記事は生きた情報で、大変興味深く拝見しました。
小生海外旅行先で必ずガイドに、自動車学校はあるのか、楽器はどこで(何屋で)売っているのか、現地の人はパスポートをどこで入手するのか、葬儀屋はあるのか、といったことを訊きます。
この記事で祝儀の相場も分かりました。(1000バーツは3000円ちょい換算でいいのかな?)
機会があれば、定期券を買うときに在学もしくは在職の証明書が要るのか、床屋は何をしてくれてどのくらい時間を要するのか、一般的な葬儀の様子や費用などもご紹介いただけば幸いです。
やっぱし、沖縄と似ています!
披露宴は終盤まで内地とそう変わりませんが、最後に「かちゃーしー」ってお祝いの踊りを新郎新婦全員が壇上で踊ります。
「あいや~それそれ!はっはっは!」
で、朝まで飲みまくります。
ご祝儀は学生なら5千円。
社会人でも2万円で相当な大盤振る舞い。
不祝儀は3~5千円。
香典返しなしがノーマルです。
※20年位前のデータですが、内地よりも5~4分の1位ですね。
礼服にもそれほど気を使いません。
暑いですから♪
特定の宗教はなく、沖縄は「先祖崇拝」で血縁者を大切にします。
「門中」もんちゅうと言います。
祝儀不祝儀に限らず門中を大切にする文化があります・・・・・・・
しかし、創価学会がのさばり、左翼たちが沖縄の門中文化をも壊していることに激しく憤りを感じてる今日この頃であります。
江坂王将殿、
コメントありがとうございます。
冠婚葬祭のご祝儀・香典は、似た様な金額を包んでおけば構わないようです。
後は、タンブンと言ってお布施もありますが、気持ち次第でしょう。
床屋は、QBハウスもバンコクにあって、100バーツです。日本人相手だと、相場が高くなるので、自分はそこしか使っておりません。
楽器屋の通りも、バックパッカーの溜まり場のカオサン地区の近くにありまして、そこでギターを買いました。五千円くらいでした。
このような生活上のネタは、ブログで結構、書いて来ました。良かったら記事をお探しの上、お読み下さい。
海治朗さんへ、
タイの結婚式では、朝までは飲まないと思います。
と言うのも、途中で悪しからず中座させていただいたからです。
沖縄と雰囲気が似ているのですか。
まあ、どちらも南国なので、気分は同じになるのかもしれませんね。
そう言えば台湾の人のお墓も、門中ですよ。現地へ出張した時に、墓場を通りかかった時がありました。
一つ一つの墓には、石の塀囲いの中にカマボコ型の石室があるのでした。やっぱり、台湾は沖縄に近いので、習俗は同じなのでしょうか?
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