タイのとりえと言えば、暑さでしょう。
一年を通じて、日中は必ず三十度になり、一番気温の低い朝方でも、日本で言えば必ず熱帯夜、つまり25度以上になる日が大半です。
それだけ、暑ければ、服装も井手達も、汗をかかない気軽な格好になるのは否めません。
半袖は常識的に当たり前です。
日系企業の皆さんも、工場勤務の方だと、半袖の工場服で出勤されます。
それでも、金融・保険・商社の方は、ちゃんと背広上下を着ておられるのです。
営業関係の方もそうでしょう。
客先回りがありますから、相手に粗相が無いように身なりは背広でピシッとしています。
それで、私の場合なんです。
私は、毎日、背広姿でちゃんとネクタイも締めて出勤します。
でも、勤務先は工場には違いありません。
もっとラフな格好で勤めたって、誰もとがめる人はいない。
それにもかかわらず、こだわります。
なぜなら、社長だからです。
しかも、日本人は、その社長一人だけだからです。
何があろうと、会社を代表しています。
あらゆる事態に備えて礼節を失わぬよう、身なりは正しくなくてはならないのです。
実は、私がそう思うようになった忌ましめの先例があります。
それは前任者でした。
二年前、引き継ぎのため、短期出張をしました。
相手も、業務をこなしながらの引き継ぎなので、十分な時間がありません。
このため、手持ち無沙汰もあってか、身の回りの働く環境を注意して観察するようになりました。
この時、気がついたのが前社長の服装でした。
ズボンは、折り目もついていなくてヨレヨレでした。
ワイシャツは、半袖ですので良しとしましょう。
ネクタイは締めず、ジャケットのポケットに突っ込んでいるようでした。
その上で、ジャケットがアイロンをいつ掛けたか分からない。
背中にしわが寄っていてくたびれていました。
しかも、革靴はいつ磨いたのか分からないぐらいに、経たっていました。
何となく、単身赴任のわびしさの風情が漂っているのです。
単身だから、気も回らずに服装がおろそかになっていたのかもしれない。
でも、現地スタッフのベース給から見れば、十倍以上になる高給取りなんですよ。
身繕いは、手にする所得に比例して、相応が要求されるのです。
身なりの悪さは、現地のスタッフに失礼と言うものでしょう。
経営者は毅然たるものを必要とされるのです。
それは、俗に言うTPOだとすれば、服装は第一義です。
何事にも、人間は姿・形から入ります。
ボロは着てても心は錦などと、昔のヒット局の歌詞もありますが、それは偽りです。
相手に礼を失することの無いように、世界中のいずこでも服装はこざっぱりしていなくてはなりません。
そして、私は決心しました。
こちらでも、特別な理由の無い限り、背広上下で出勤するのです。
こうして、二年間を背広服姿の通勤で押し通してきました。
それには、一緒に来てくれた上さんがいたからこそ出来たようにも思います。
ズボンの折り目がなくなったり、背広の背中にしわができれば、さり気なくアイロンを掛けてくれます。
靴が汚れていると言って、チャッチャッと磨いてくれます。
この気遣いは、たまらなくうれしいですね。
日本での生活と同様に、変わらなく企業戦士の井出たちに配慮してくれる。
内助の巧に感謝したい、上さん、どうもありがとう。
そして、思いました。
単身赴任者ならばこそ、服装をおろそかにしてはならない。
いっそう配慮する必要があると言うことです。
と言うわけで、自分も外地であろうが内地であろうが、戦士の装束は重要なのです。ダイエーで買った一万三千円の背広であろうが、ズボンの折り目もあって、しわの寄らない身なりであれば、堂々と海外であっても戦えます。目に見えないコストこそ、人が行き抜くための技量であり能力なのです。そう感じた道産子社長なのでした。
(この巻き、おわり)
6 件のコメント:
男性にはスーツという強い味方があってうらやましく思います。もちろん前社長のようにヨレヨレになっているとスーツも意味をなしません。けれど、スーツ1つですぐに戦士に変身できるのがうらやましいです。
女性もスーツを着れば変身できますが、何せスーツを選ぶこと自体に選択肢が多すぎます。
まして私のようにハイヒールが履けない身体になると、スーツが着られません。ブーツを履くことで、何とかごまかしています。夏も夏用ブーツでごまかしています。。
御無沙汰しました。
2週間の地獄巡りがようやく終わりそうですが、来週からまたグダグダになります。
この2週間で背広もネクタイも靴もクタクタになってます。
戦闘服なのですからもっと大切にしなくてはいけないですね。
勉強になりました。
昨日今日の横浜は暑いくらいです。
今宵はゆっくりブログります。
なう。
チョッと耳が痛いですが全く同感です。
特にタイは外見をとても重視する国ですからやっぱり社長はバリットとした身なりでないとまずいですよね。
私は殆ど短パンにTシャツ、ポロシャツですが、店番があるので本当は普通のズボンをはいたほうがいいのかも・・・・。
でも一応Tシャツにもポロシャツにもアイロンはかかっています。
お寺で正式なことがあるときは普通のズボンを履くようにしています。
旅行でタイに来る人はいいですけれど、タイで生活している人は身だしなみは大事ですね。
とよこさんへ、
前任の方には、比較してしまって申し訳ないとは思いましたが、お互い中高年になって、そんなところまでご注進するわけにも行かず、自分の戒めと思って記事を書いてみました。
要するに服装とか持ち物、腕時計、筆記具、システム手帳なんかで、相手の服装・持ち物に気づいて、気後れしたらビジネスの交渉事は、すべて負けなるのが、分かりきっています。
逆に、着物・持ち物を見て分不相応なら、嫌味な奴だなーとか思えば、話し相手としては互角で渡り合えるものです。
ちょっとしたことなんですが、宮仕えとしては大事だと思うんですよ。
海治朗さんへ、
ブログ更新の間隔が空いたんで、お忙しいのだろうと思っていました。
お体をいたわって下さい。
二週間の外回り営業っぽいような感じもしましたが、それだけ日程がハードで着替える余裕が無いと辛いですよね。
クタクタになっていますとありましたが、背広や靴は、古のサムライであれば、甲冑や兜のような戦道具でしょう。
お役目ご苦労と言って、背広はクリーニングに出したり、革靴はクリームを塗ってブラシ掛けしてあげたり、いたわれば長持ちするもんです。
自分にしっくりあった衣装を長く使い込んで、仕事にいそしむのも必要なんじゃないでしょうか。
それと、ブログ記事を楽しみしてますので、ヨロシク。
ドラえもんさんへ、
現地のタイスタッフを見ていますと、マネージャークラスの人でも、工場服姿で出勤してきます。
そんな日常に流されて、社長までラフな格好で終始するようになるのは、まずいような気がしました。
社長は、会社の最終的な意思決定を担う責任があると言う意味を、外見から区別させるような出で立ちが必要だと思うのですよ。
サラリーマン社長と言えども、責任は重いのです。現地の人間とは、一線を画すべきでしょう。
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