仙台に降り立ったのは四月の十八日でした。
函館から青函トンネルを抜けて、八戸で新幹線に新幹線に乗り換えました。
そして、仙台のプラットフォームに降り立ったのですが、まだ肌寒い。
かなり南下したはずです。
桜も咲いて暖かくなっていると思ったのに、当てが外れました。
とにかく、北海道は寒かった。
帯広も札幌も函館でも、雪がちらついていました。
まだ、冬の名残りが残ったままです。
もう、四月の中旬ですよ。
東京では、既に桜が散ってしまいました。
それに、北海道の地元テレビ局を見ていてびっくりしました。
桜前線の開花予想が、連休明けなのです。
一番早く開花する函館でも、五月七日らしい。
仙台の桜は咲いたのだろうか。
ちょっと心配になってしまいました。
ところで、仙台には、前の会社で世話になった、道産子つながりの先輩が暮らしています。
今回は、そちらへお邪魔しました。
ストレートに横浜まで帰るのがもったいなかったのです。
休暇が終われば、また四十度の真夏のバンコクへ舞い戻ります。
日本の春の風情を、少しでも楽しんでおきたかった。
それで、わがままだったのですが、ご厄介になりました。
迎えに来てくれた先輩が、仙台はまだ二部咲きだと話してくれます。
そして、わざわざ、青葉城址の公園へ車を運転して回ってくれました。
これで、分かりました。
二部とは、咲いていないのと似たようなものです。
木立の合間から向こうが透けて見えるような寒々しい景色でした。
今年は、異常気象なんだろうか。
実を言いますと、先輩を誘って三春町の滝桜を見に行きたかったのです。
枝垂桜の巨木で、福島県の特別天然記念物です。
花が咲きそろうと滝の流れ落ちるような印象から名づけられたのだと思うのです。
そう滅多に見られることはありませんから、私から切り出しました。
面白そうな提案らしく、先輩も賛成してくれます。
でも、滝桜は山間部に在って、二三日前には雪が降ったくらいです。
きっと、桜の開花は遅れているだろう。
相談の結果、行っても期待はできないだろうと言うことになりました。
そこで、どこか近くに桜の名所は無いか、ネットで探しました。
ありました。
柴田町の船岡城址公園と白石川堤が、有名なようです。
後でパンフレットで知ったのですが、日本のさくら名所百選になっています。
しかも、五部咲きを超えたので、満足できると踏みました。
早速、翌日に先輩の運転する車に乗せてもらって出かけました。
高速のインターチェンジ一つ分を下るだけです。.
しかも、小一時間ほどのドライブですみます。
むしろ、駐車場の入り口が込んでいてちょっと時間が掛かりました。
この船岡城址は、町の外れにあって小高い丘になっていました。
五部以上は咲いていたでしょう。
いや、七部くらいまで開花していたのかもしれません。
辺りは、淡い紅を差したように化粧をした桜の園です。
ゆっくりゆっくりと、山頂を目指して歩いて上って見ました。
ケーブルカーに乗ることもできたのですが、二十分待ちはちょっと長い。
体を動かせば、寒さしのぎにもなるでしょう。
途中途中で、白石川の桜並木を見渡せば、まさに絶景です。
うーん、滝桜一本よりは、数で競う美しさでしょう。
まるで、下界は淡いピンクで染まったかのように霞んでいました。
こんな別世界は見たことが無い。
と言うわけで、自分の人生の中で、一番の花見をここ柴田町で満喫することができました。
しかも、白川堤の一目千本桜は、まっこと圧巻なのです。
昔、東京に就職したはずが、仙台勤務になって赴任する車中で見た桜に違いありません。
それは、かつての東北本線の特急「ひばり」で見た再来なのです。
でも、今は、新幹線になってしまい、早く移動する便利さだけが勝り、旅の風情は廃れたものだと、心底かみ締めた貧乏社長なのでした。
(この巻き、終わり)
おまけ:
自分が仙台へ赴任した年の秋に、在来線特急「ひばり」が廃止されています。
ぎりぎりのところで、乗れたようです。
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