客寄せパンダは、良く知られている言葉だ。
(8月24日付け、バンコクポスト紙より)
何時ごろからこの言葉が使われ出したんだろうか? グーグルで”きゃくよせ”とひらがな打ちをしてみた。すると、変換する前の状態で、四つの検索候補が現れて来た。
客寄せパンダ 94,800件
客寄せ物件 18,100件
客寄せパンダとは 74,100件
客寄せパンダ 吉田 9,260件
最初の言葉をクリックした。語源にまつわる由来を解き明かそうとしたホームページが続々出てくる。店やイベントなどで関心を引いて客を集めるための人物等を指し示すのは、言わずもがな分かる。動物園でパンダが大きな客集めに効果を持つことから意味が転じて広まったらしい。
ただ、この言葉には裏もある。単なる人集めの手段で使われるだけで、内容や実力が伴っていない。やや否定の意味でも使わる感じがした。現に、四番目の”客寄せパンダ 吉田”と言うキーワードは、そうかもしれない。若干十七歳で、女性初のプロ野球選手になった吉田えり投手は、関西独立リーグの「神戸9クルーズ」に今年入団している。しかし、独立リーグだろうがなんだろうが、職業野球=プロ野球に変わりは無い。他人の御足を貰って芸を披露できるほど、力量は伴わないと見た人も多い。だから、この不思議入団を、世間は客寄せパンダやらネタ仕込みなどと酷評したのだろう。
可哀相な感じもするが、現実の目は厳しいものだ。
それに比べれば、動物園の虜囚となった、獣たるパンダはうらやましい限りだ。三食昼寝つき、冷暖房完備の獣舎を提供されるのなら、安逸を貪る人生、いや獣生もそう悪いものではないと感じてくる。あの、愛嬌ある白黒ぶちは、天が与えたもうた摂理である。可愛さを持って人類に媚び、そのおこぼれにあずかって絶滅を逃れるのなら、それもまた天命なのであろう。そのように思うのである。
何と幸せな一生であろうか?
しかも、彼らの吊上げられた代価は、途方も無く高い。その代金、何と年にして一億円になるのだ。雄雌のつがい二頭を招聘したければ、中国に三跪九叩頭の礼を持って恭しく挨拶し、恭順の意を示す証として朝貢せねばならない。貴重ゆえに、人間以上に至福の生活が与えられるのも馬鹿馬鹿しい。しかも、パンダは獣のくせに中国籍なのだそうだ。ワシントン条約では、パンダは学術研究目的以外での取引は禁止になっている。それで新たに繁殖したら、中国に返還するという掟もある。
何れにせよ、法外に値の張るレンタル商品である。
実を言うと、この大熊猫とか言う中国語の生き物は、タイでも数年前から存在していた。チェンマイ動物園には、雌のリンフイと雄のチュアンチュアンが居る。そして、この六月には人工授精で幼獣も加わり、三頭と一家になった。その子は、八月にはリンピンと命名されたが、中国籍の運命もあって、二年後には里帰りする。動物園では、パンダ舎「雪の降る家」も蛇足で建設した。建物の概観は、万里の長城がモチーフのようで、室温が-5℃に保たれていて南国のスノードームが味わえる。観光客を目当てにした作戦なのか、客寄せの看板たる資質は、ここタイでも遺憾なく発揮したみたいだ。
(写真は、生まれて一ヶ月経った頃のテレビニュースを撮ったもの。)
ちなみに、総工費は約1億8000万円で、繰り返すがレンタル料は一億円だ。
つまり、野獣に大金をはたくのである。チェンマイでは、労働者の日給が168バーツ470円にしかならない。日本と比べれば十分の一以下だろう。もし、この一億円が、給料として振る舞われたなら、約六百人の人々を一年間雇うことができるのだ。この人数が少ないとは、考えたくない。なんと幸せな絶滅危惧種であろう。人智を通り越して、愚昧の取り計らいと見なすのは自分だけなのだろうか。
そんなことを辛口に考えつつ、見た目が可愛いのは百も承知だが、人々の生活が優先されるのが本来であろうと感じる、貧乏社長なのでありました。
(この巻き、終り)
おまけ:世界的な下着メーカーのトリンプは、関連会社のバンプリー工場の作業員二千人近くを解雇することと発表しました。下の写真は、これに抗議するためデモをした従業員の写真ですが、黒いタイツ姿で商品の下着上下に、パンダのお面を被った参加者のアイデアはしゃれていると思いました。
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